「ピンピン、ひらり」という老い方

2022-04-08

「ピンピン、ひらり」という老い方諏訪中央病院名誉院長の鎌田實先生が、2022年2月8日に「徹子の部屋」(テレビ朝日)に出演した際、黒柳徹子さんに「73歳、今の目標は?」と質問されたそうです。2022年4月5日に出版された鎌田先生の新著「ピンピン、ひらり」のまえがきで鎌田先生の答えが紹介されていました。


「ピンピン、ひらり」という老い方ぼくはこう答えた。

「80歳でもイラクの難民キャンプに診察に行ける筋肉を維持したい。90歳まで生きられたら冬にはスキーをしたい。でも、いちばんの目標はPPHです。PPH、知っていますか?」
徹子さんは、頭の上に「?」を浮かべて身を乗り出してきた。

「ピンピン、ひらりです。死ぬ間際までピンピン元気に生きて、ひらりと逝きたいと思っています」
ここで番組は終わったが、話は続いた。徹子さんのお母さん朝さんは、2006年に95歳で亡くなったが、間際までやりたいことを続けていたという。そして、「じゃあね」と言って、旅立った。いいなあと思った。
まさに見事なピンピン、ひらりだ。

では、どうしたらひらりと逝けるのか、その前に訪れる長い「老い」を、どうやってピンピン生きるのか。そもそも、老いを生きる目的は何なのか。
本音を言うと、ぼく自身も年なんか取りたくないと思っていた。
人生には必ずしもピンピン生きられないときがある。「ピンピン」と「ひらり」の間にあるはずの「老い」を、ぼくは無意識のうちに考えないようにしてきたが、避けたいと思っていた「老い」も、視点を変えてみると見え方が違ってきた。
子育てを終え、仕事の第一線から降りることは、「役割を失うこと」ではなく、「自由になること」。

体や心の働きが哀えていくということは、「未知なる自分と出会うこと」でもあるし、多くの人に助けられ「他者とかかわる機会が増えること」でもある。
老いには、「死を身近に感じながら生きる」という特権もある。
そう、死を意識するからこそ、生きていることの尊さがわかるのだ。

老いという“下り坂”は、美しい景色も見せてくれる。“上り坂”は上ることに一所懸命で、自分の足元しか見えていないことが多い。
でも、下り坂は違う。眼下には、これまで上ってきた道のりや、すそのの広大な景色が広がっている。その美しい景色は人生のご褒美といってもいい。

「いいことも、嫌なこともあったが、今思えばおもしろい人生だった。もうすぐ自分は死ぬけれど、嫌じゃないんだ。死ぬのもまんざらではないと思えるようになったよ」と長年、農業をやってきた高齢の男性が、緩和ケア病棟で亡くなる前にそう言った。
この男性も、黒柳さんのお母さんも、老いを完全燃焼したからこそ、ひらりと逝くことができたのだろう。
本書は、鎌田先生の体験から得た老いの受け止め方や、ピンピン元気なときを延ばす生活習慣、老いの価値の見つけ方について書いてあります。自由な発想で老いを楽しむ人たちも紹介されています。

配信 Willmake143

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